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2008年02月04日

設題1 第二回(全三回)

【解答篇】
 名探偵の登場は、いつもドラマティックなわけじゃない。僕と稲葉との出合いも、そうだったんだ。そう、それはただ一本の電話だったんだ。
 その電話は、やっぱり八月の始めの方、事件の次の次の日だった。
「もしもし、警察ですか?例の神社の事件で気づいた事があってね。それで電話をね」
 僕が受話器をとると、陽気な声がした。刑事部まで電話を回してもらっておいて、警察ですか?もない。 彼は事情を録取中の参考人でも出ると思ったんだろうか?
「先ずは姓名と職業を名乗って下さい」
 って僕は言った。
「僕は炭都日報を読んで電話した、稲葉って者です」
 炭都日報とは、事件現場付近で発行されている地元紙で、変死体の珍しい田舎だけに、この事件は詳しく、二日続けて、一面で取り上げられていたんだ。肥後朝報やデイリー鎮西、日刊火の国ニュースなんかの地方紙でも、社会面に小っちゃく取り上げていたんで、覚えている人もあったかもしれないね。
「今は国立Q大学の数学科で、数論と和算の講師をね。それから、クレームっていうスリーピースの楽団で、ガットギターを担当しているんだよ」
 彼らクレームは、ロック&ロールミュージックのコンボだ。編成は、ガットギター、コントラバス、ドラムの三人組で、とってもとても凄いんだ。特に稲葉は、スリーハンドという異名まで持ってるくらいなんだよ。
 それは兎も角、稲葉は続けて一言こう言った。
「野菜屋だよ」
 この言葉に、僕は捜査の極秘情報が漏れてんのかって、ドキリとした。
「どうして、そんな事が言えるのです?」
 と聞くと、
 「簡単じゃないか! 殺人罪の適用は、こっちの刑法に疎いので、何とも言えないけどね。つまり、二酸化炭素だよ。個体のね」
「二酸化タンソ? コーラに入ってるアレ?」
 まったく、僕には言っている事が理解できなかったよ。
「そう、シャンディーガフにも気体の状態で入ってる、例のげっぷの元だよ。まあ、それは兎も角としてさ、たたんであった包み紙、あれは野菜屋で、コンニャクを冷やすサービスを装って、チューさんだとかいう男に渡されたんだぜ。俗称をドライアイスっていう奴があるのを、君は知らないのかい?」
 「チューさん」という言葉を聞いて、確かに被害者はねずみに顔が似てた事に気づいたんだけども、どうやら「仲山」を、音読みしただけらしかった。稲葉は、僕がドライアイスを知らないと思ったのか、
「二酸化炭素を圧縮液化して、噴出させると、断熱気化の際の潜熱によって冷やされて、縁日で食べる日本のフラッペみたいに、氷の粉に成るんだ。これに液体二酸化炭素を加えて、圧搾して固めたモノが、ドライアイスさ」
 と、迷惑な事に解説を始めたんだ。僕がそれを聞き流していたら、用件は終わったらしく、
「それじゃ」
 って、向こうが受話器を置いたんだ。ガチャンてね。
 稲葉の話は良くわからなかったけども、上司の川さん、川副登警部に、取りあえず今の内容を僕は報告をする事にした。

投稿者 strap : 2008年02月04日 00:59

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