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2006年12月18日

「墓石村事件」 16

「これで終わりですか?」
「これで終わりです。私とストラップは、一緒にファミリアで帰りました」
でも、何だか続きがありそうな感じだった。
「でも本当は、続きがあるんでしょう?」
僕は一応聞いてみる。
「私はあると思っています。がしかし、一般的にはない、という事になっていますね」
どういう事だろうか。
「最初にちょっと話題にでた連続殺人、憶えていますか。そう、福岡や岡山、大阪なんかでおこった連続殺人事件です。被害者全員が親戚だったという事は、知っていますね?」
「ええ、知っていました。当時話題になった事件でしたからね。僕は確か高校一年です」
「ユキは二年生だったっチャ」
「確かあれも、未解決事件でしたね」
「そうです。この事件は我が県以外の都道府県警察が、無能だという良い証拠と言えるでしょう。あれが今後解決すると言う事も、恐らく無いと思います。私は倉井という男が、どんな非道な事をしたかを聞いていますから、担当の事件にでもならない限り、事件解決を強くは望みはしません。恐らくは墓石村の住民達は、まったく望んでいないでしょう。駐在さんだけは、警察官と言う立場がありますから、そうは言わないでしょうが。今考えてみればあの映画祭自体が、この事件を起こす為に開催されたのではないかとすら、私には感じられてしまいます」
どういう意味なんだろうか。話に脈絡がない様に、僕には感じれれた。
「あの事件を裁くという事は、あの村の村民をも裁く事にも通じます。村に平和と平穏をもたらす為に、彼等は多分、仕方なくアサツネイターを雇いました。私は、その気持ちが何となく理解できるのです。そうであるならば、せめて、自分の管轄以外で起った証拠の無いケースには関わりたくは無い、そう思うのですよ。無論、熊本県内での事件ならば感情を排し、法に照らして厳しく捜査をしなければなりません。しかしその義務がない時ぐらいはそう、私は自分の気持ちに素直な判断をしたいのです」
確かに証拠と言える物が無いのだろう。
「話を戻しましょう。では、あの事件の被害者の苗字は憶えていますか?まあ一世帯だけ、山田という名前になっていましたね。そこは世帯主が助かりましたけど、その他の家族です。」
「ユキ知らーん」
「僕も憶えていません。何だか珍しい名前だった様な覚えはあるんですけど」
その時マスターが一言言った。
「幕炉だったぜ。そうだろ、兄ちゃん」
「ええ、そうでした」
広瀬さんはにっこりと笑って、そう言った。
「おそらくは、倉井と幕炉兄弟に恨みを持つ誰かが、殺し屋を雇ったのでしょうね。そして彼はその一族を根絶やしにして回ったのです。後に被害者、倉井育馬の一人息子も、北九州で通り魔に刺され、殺されています。この事件もご存知の通り未解決事件です」
何かに気付いたらしく、
「お前さんが、ねえ。相手はオレでも知ってる、超有名人じゃねえかい」
とマスターが言うと、
「まあ、私の完敗だった訳ですが」
と広瀬さんは恥ずかしそうに笑った。超有名人? 一体誰なんだろうって僕は思った。
「何言ってんだ。海千山千の相手に、経験の浅え学生が勝とうっていうのが、そもそも間違いだわ。話を聞いた限り、あんた良くやったよ」
とマスターが褒めると広瀬さんは、
「いえ、しかしストラップがもう少し早く来ていれば、事件は無事解決していたかも知れませんからね。解決に導けなかったという、悔しい気持ちはやはりあります」
 と言った。それから、
「それからもう一つ」
と、広瀬さんはみんなを見回した。
「国際的暗殺者、アサツネ・イダ。平成十一年に我が県で開催された国民体育大会での事件。あの狙撃事件の被疑者です。彼は地裁が発行したばかりの札を見せた私に対してそっと、こう言いました。「ロングタイムノースィー。俺の顔は、忘れたかい?」と」
なるほど、そうだったのだ。
「「あんた、技術者かなんかになるんだと思ってたよ。アノ事件が切っ掛けならば、悪い事をしたな」と彼は続けて私に言いました。その時私は彼の顔を、印象は随分違うものの、知っていたという事を思い出しました」
その先はもう、聞かないでもわかった。
「そう、彼は例の電気工でした」

投稿者 strap : 01:54 | コメント (0)