« 「墓石村事件」 13 | メイン | 「墓石村事件」 15 »

2006年11月10日

「墓石村事件」 14

TVドラマなどで良く言う硝煙反応とは、このシリンダーギャップの関係上、射手が発射薬の燃え粕を被る為に表れる物だ。
「じゃ、じゃあ、先込め式のピストルっちゃ!」
「先込め式だぁ?ありゃ、そこの肥後銃もそうだが、先ッぽから玉ぁ突っ込む関係上、スムースボアで狙撃にゃ向かねぇよ。それに丸いボールじゃなきゃあな」
と、しゃがれ声でマスターが教えてくれた。実際問題、ライフリングマークが残っていたんだから、少なくともライフルのある銃の筈だ。
「じゃあ、じゃあ、」
苦し紛れにお杉は鋭い意見をいった。
「口径が実は間違いで、実は変なワイルドキャットカードリッジだったんだっチャ!確か、工場生産品の鉄砲玉じゃないっていう話だったっチャろう?」
なるほど、これはあり得ると僕は思った。308win弾の弾頭を使った自作のカードリッジで、ボトルネックでも無いケースをくっつければ何とかいけるかも知れない。スライドを交代させたままのピストルの薬室に、直接一発突っ込んで、スライドを前進させれば、それで準備はOKだ。
「そうだ、それだよ、お杉。30ルガー弾や32ACP弾の弾丸径は、308win弾とほとんど同じだからそれらのケースを使えば!うん、いけるよ、これは!」
僕はそう言ったんだ。だけど僕達二人の話を聞いて、広瀬さんは怒り出してしまった。
「君達二人とも、何を言っているんです! 私は工夫をすれば良いと言ったでしょう。狙撃に使われる銃はボルトアクションが一般的だという話もしましたね。口径も308ウインチェスター弾に準じるサイズだったと、はっきり言いました。これはブレットの発射速度や燃焼痕によるプレッシャーを割り出した後、ストラップがはっきりと認めています。間違いの無い事実です。30ルガーや32ACPといったアミネーションの弾丸重量は、ずっと軽い物だという事も忘れてはいけません。その手の口径で使用されるプロペラントの量で狙撃は不可能です」
確かに犯人は、使用した銃の口径を偽装する必要というのは、今回の事件に関してはあまり無いのだから、この口径が必要だったから使ったって考える方が自然だろう。第一、そんなトリックを使えば、当然の事ながらピストルによる狙撃なんて物は到底出来ないのであるから、本末転倒している。
「常識的に考えて下さい。普通に考えれば、ボルトアクション方式のハンドガンを使ったという事になるでしょうに。子供騙しの推理小説ではないのですから、奇抜なアイデアを無理に出す必要はないのですよ」
僕は自分の浅はかな知恵を、恥ずかしく思った。
「しかし君達の考えたとおり、アモのサイズの関係上、一発しか装弾はできぬでしょう。おそらくはチェンバーに直接、という事になると思います」
「しかし広瀬さん。ボルトアクションのピストルなんかあるんですか?」
僕はそんな馬鹿げた代物、聞いた事がなかった。
「ええ、私も当時そう思いました。しかしストラップによると、少数ながらある様ですね。又、そういう風に改造したものも少なからずある様です。主にシルエットシューティング等の、競技用のハンドガンですね」
「ユキ知ってるっチャ。ドミネーターがそうっチャ」
「良く知っていましたね、杉村君。パックマイヤー社のドミネーターは、コルトの45ACPを、十四インチバレルのボルトアクションハンドガンにする、コンバージョンキットですね。ストラップに聞いたんですか?」
「そうっチャよ」
僕はそんなの知らなかった。コルト・ガバメントが、まさかボルトアクションのピストルになるなんて!
「まあ、アメリカのウイチタ社やレミントン社、ドイツのアンシュッツ社等が、ボルトアクションハンドガンを作っています。これらが犯行に使われた可能性もありますし、もっと別の物かも知れません。しかし我々は、凶器がハンドガンだとはまったく、考えていませんでした。ショルダーウエポンのサイズばかりを捜していたのです。隠そうと思えば、これまた何処にでも隠せてしまいます。そう、車の助手席の中にもです。照準精度を上げる為に、スコープや折り畳み式のメタルストックを使ったとしても、やはり大きなスペースは必要としませんね」
僕には衝撃的な答だった。

投稿者 strap : 2006年11月10日 17:15

コメント