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2006年09月20日
「墓石村事件」 5
「頭が破裂したって事は、」
僕は一口タコスをかじり、一応そう聞いてみた。
「ええ、だから銃声が後から聞こえたのです。尤も、銃声が後から聞こえたという事は理論上の問題で、実際は同時に感じました」
広瀬さんはこう答えた。
「つまり、高速なライフル弾か、イクスプローシブブレットの様な特殊弾頭だったという訳ですね。でなければ、頭蓋骨を破る程の衝撃波、瞬間空洞は作りだせないでしょう。実際は、音速よりも速いライフル弾だった訳ですが、それを見た瞬間の時点では、何がなんだかわかりませんでした」
イクスプローシブブレットとは、炸裂弾丸の事で、炸裂弾のブレットの事だ。しかしこれは貫通力に難が有るので、破裂するのは頭蓋骨の中ではなくって、骨に当った瞬間だろう。だから今回のクーデグラは速い弾なんだね。
「それで広瀬さんはどうしたんです?」
「その時は皆パニック状態でしたから、何もできません。私がした事といえば、それを見た人の顔を覚える事ぐらいでした。その場で倉井の破裂を見た人ならば、射撃はできませんからね」
「射撃の際の、銃口発射炎は見ましたか?」
「いえ。マズルフラッシュには、その場に居た者は誰一人、気付く事はできませんでした」
発射煙なら兎も角、薄暗い中での射撃で銃口の光に気が付かない物なのだろうか? 僕は疑問に思ったんだけど、
「私はフラッシュハイダーや、リコイルレデューサーの様な器具が取り付けられていたのでは無いかと予測しました」
と、広瀬さんが言うので納得した。
「じゃあ、どうして狙撃って分かったっチャか?」
「倉井は、校庭の西の端、プールの側で撃たれた訳ですが、方向的に東側、つまり校庭側から撃たれたのです。これは、校庭のその方向には誰もいないのが見えましたから、学校の敷地外から撃たれた事になります。そして校庭は、東に約百五十メートルのびていたのです。少なくとも百五十メートルの距離が犯人と倉井との間にあった事になるのですよ」
「すいません。学校の敷地の概略を教えていただけないでしょうか。どうにもわかりづらくって」
僕がそう言うと、
「俺もそこがよくわからねえと、そう思ってたんだよ」
と、聞いていたらしく、マスターがしゃがれ声で言った。他に客もいない事だし、暇だったのだろう。
「そうですね。事件とはあまり関係がないと思ったのですが、一応説明しておきましょう。校舎を中心に考えますと、北に正門、南にグラウンド、西に体育館です。北側には、銀杏の木だとか、百葉箱、ウサギの飼育小屋、野外便所等が有りました。校舎は二階建ての木造で、音楽室だとか理科室だとかも、同じ建物にあった様です。教室は、一学年に二つだと聞きました。つまり十二クラスあった訳ですね。グラウンドは、長手方向が百八十メートルくらいで、西の端にはプール、体育館、西門などが有りました。東側には相撲部が練習に使う土俵と、倉庫、東門、肋木、花壇、それだけですね」
「その東門の辺りから撃ったんですね?」
「結果的に、そういう事がわかりましたが、犯行当時は薄暗く、そこに人陰を発見する事はできませんでした。この事件は、当日村にいた全ての人、千五百人を潜在的な被疑者として捜査対象とする、大規模な物になりました」
投稿者 strap : 2006年09月20日 00:50