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2005年12月03日
三国志を題材とした短編小説の執筆論
「三国志小説論」を気取り名乗る、本サイトのメインテーマである。
久しぶりに本題に戻りたい。周倉を主役とした掌編「漆黒の躯」の様な下らない作品よりも、こちらを本来優先すべきと反省。参考
三国志物語を小説化する。これは本来、長編小説であるべきだろう。1000枚や2000枚程度で済む筈が無い。三国志物語の頭とお尻をドコと定義するにしても、三国志物語というのが短い時間で起きる出来事を指すとは思わぬし、短編や中篇で収められる様な単純な話でも、寡ない登場人物でもない。とは言え、長編小説を書く事は、アマチュア三国志物語作家にとっては非常に負担である。
先ず、長編小説を書くには根気が要るという事。長編小説ともなれば簡単に書く訳にはいかず、そのモチベーションの維持にも努力が必要である。特に、己が書きたい場面だけを書く訳にはいかず、ストーリーの進行上書かねばならない中弛みのシーンも必ず出てくるだろう。これが何とも辛い。
次に、優れた構成力を要するという事である。つまり、技術的な問題だ。無論、短編である方が優れた構成力を必要とされるケースは多い。が矢張り、長編小説では長大なプロットを最初にある程度決めて書かねば、伏線が生きず、薄っぺらい話になりかねないので、これが必要である。
最後に、読者の負担が大きいという事である。長編は簡単には読めない。読めなければ、感想が聞けない。聞けなければ、やはりやりがいが薄いのである。
(以上、長編小説をかくネックを三点挙げたが、他にもあるかもしれない)
まあ、上記の理由で、ノンプロの三国志小説は、結果として一エピソードを抜き出した短編、乃至は中篇にならざるを得ないのである。僕も完成させた三国志小説は、短編しか無い(500枚を目標とした作品を執筆中)。短編だと物語の中弛みも少ないという効果もある。
(短編を書く面白みに関しては、魏の御史中丞、潁川の徐庶、字は元直に書いた様に、魅力的な人物を探す事だと思う。長編よりも、人物の魅力に依存する事が多いし、群雄劇としての物語は薄まる)
しかしこの様なネックを巧くクリアした人がいる。今更と思われる方は多いだろうが、参考の為に紹介しておきたい。
孫氏三代という三国志小説を執筆されている清岡美津夫さんである。
孫氏三代はその名のとおり、孫堅、孫策、孫権の三人の年代記として、描かれた短編小説の作品群である。僕は以前、スターウォーズやっと見ましたの中で、「三国志も年代記である」という見解を示したが、この作品群は短編小説を集積する事で、長編小説の持つ雄大な時間の流れと、話の厚みを獲得しているのである。無論一つ一つのエピソードは、短編小説なのであるから独立して楽しめるし、必ずしも連続して読む必要は無い。この様な手法を持ち込む事に因って、その短編では何気ない事であった筈なのに、別の短編で生きてくる伏線があったりと、短編小説であるにも拘らず、グッと物語に厚みが増すのだ。短編小説の長所と、長編小説の長所を併せ持ったスタイルであると謂って良かろう。美味しいやり方とはこの事である。
清岡さん自身は、「たいてい一話完結の形をとる海外ドラマを参考にしてますよ」と語って下さったが、聞き成る程と感心する。実に巧い手法である。
現在は未だ孫堅の物語に偏っている様ではあるが、徐々にその息子達の物語が語られていく事になるであろう。非常に楽しみな事である。
失礼な書き方かも知れないが、この作品群は、曹操、劉備といった本道を外したところを主軸とした物語ではある。しかしそこには、角度を変えているということ故に発生する新鮮さがあるし、膨大な史料に裏打ちされたプロットは、シナリオハンティングの生真面目さが現れていて好感が持てる。手法のみならず、この姿勢も見習いたいものである。
さて、年が明けたら又短く実験的作品を一本書こうと思う。次作のタイトルは「謀臣の資質」。全三回(予定)。
(2006年7月1日の追記)
「漆黒の躯」公開を中止。
記述者 strap : 2005年12月03日 01:53
コメント
こんばんわ、清岡です。
どうもご紹介、ありがとうございます。
なにかこうやって書かれると嬉しい反面、照れますね(笑)
記事の内容はストラップさんとの今までのやりとりのまとめっぽくていろいろと頭の整理ができました。
まぁ、短編で重ねていく短所はその都度、冒頭で舞台説明や登場人物の説明なんかをいれないといけないってことでしょうか。
記述者 清岡美津夫 : 2005年12月06日 18:40
>清岡様
今回は紹介記事の掲載を快諾して戴きました事に深く感謝を致します。
短編小説を連続して書く事には確かに、上記の様な短所は存在しますね。でも、それが持つ大きなメリットと較べれば、些細な事という気もします。
応援していますので、続きを読ませて下さいね。
記述者 ストラップ : 2005年12月06日 18:51
オススメ三国志
三国志群雄伝 火鳳燎原 The Ravages of Time
三国志群雄伝火鳳燎原三国志群雄伝火鳳燎原 2
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いわずと知れた、三国志漫画の最高峰です。香港人の陳某氏が香港・台湾の雑誌で連載をしており、世界的な人気が有ります(これはその日本語翻訳版です)。
主人公は司馬懿と燎原火(趙雲)で、三国志物語を大胆なアレンジで描いているところが人気の少年漫画です。史実とは年齢が合わない等、大幅に改変された設定や追加されたキャラクターも沢山いますが、それが気にならない(というよりも、寧ろそこが良い)程面白い漫画だと思います。
三国志 全8巻セット (ちくま学芸文庫)
ちくまの全訳三国志の文庫版を、セットで売っています。「三国志」は、西晋の陳寿が記した歴史書で、三世紀(つまり三国志の時代に近い年代)に書かれた、正史のうちの一つです(正史は「二十四史」と言う様に、複数存在します。「後漢書」や「晋書」も正史の内の一つです)。この訳本では、裴松之という人によって付けられた注釈も、同時に収められています。
尚「正史」とは、「正しい歴史」という意味ではなく、「ある国家によって認められた歴史書」の事で、三国志は正史の中でも特に評価は高い部類に含まれます。紀伝体という記述方法で書かれており、三国志は本紀(皇帝の伝記と、その治世の記録の事)と列伝のみで書かれています。
主役とも言える曹操の事は、主に魏書の「武帝紀第一」という部分に書かれています。曹操の息子の曹丕が「文帝紀第二」、孫の曹叡が「明帝紀第三」、そしてそれに続く「三少帝紀第四」の四つの部分が、「本紀」の部分です。
三国志演義の主役である劉備は、蜀書の「先主伝第二」、諸葛亮は「諸葛亮伝第五」、関羽や張飛は「関張馬黄趙伝第六」という列伝部分に納められています。
「魏志倭人伝」と俗にいう文章は、魏書(魏志)の「烏丸鮮卑東夷伝第三十」という場所に収められています。
三国志演義は三国志演義で面白いのですが、そのモチーフとなった史実を知る為には、先ず三国志を読むのが良いと思います。
読み易い文庫版で、入門用に最適ですよ。