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2005年05月29日

「泣き虫弱虫諸葛孔明」を読んで

今更、という感じですが、図書館で借りて読んじゃいました。
未読の方の為にも少々の解説を。

僕の孔明のイメージは、

白いスーツに羽扇を持った、嫌味で「敵を欺くには先ず味方から」な、「地球静止作戦」の立案者(今川泰宏作品に登場する諸葛亮孔明)
というところから抜け出せません。世間の人も、孔明のイメージといえば、一般的に抱くインテリのイメージではなかろうかと考えます。孔明といえば、理知的なかっこいいイメージです!しかし、酒見賢一氏は実にあっさりと孔明を奇人にしちゃいました。従来の孔明像を壊そうとする人は多くいましたが、飛び抜けて吹っ切れてます。流石は「中島敦文学賞」受賞者!ついでに久留米出身!

直木賞候補になった「墨攻」以降、僕にとって酒見賢一氏は気になる作家でした。それで、氏が孔明を主人公に書いている事を知った時は、少々の期待をしました。が、しかし。読み始めてみると、エッセイ風の作品であり、ガッカリとさせられます。ただそれでも読み薦めると、そこに味わいがある事に気づきました。

酒見氏の常の作風ではないな
と思いつつも、
どこかで読んだ事がある文体だな
と感じながら、最後まで楽しく読みました。誰の文体に似ているのか、かなり悩んだことは、申すまでもありません。

google等で調べてみると、蒼天三国志blogを始め、既に良質の書評、感想文が多くあります。僕が今更それらを書いたところで価値は低いでしょう。ですから今回は、粗筋や見所では無く、独自の視点から以下妄想を(笑)

(以下想像)
酒見氏は物語作家として、「三国志演義」のプロットを分析されています。

「物語を巧く組み立てたり、整合性を持たす為には、こう書いてはいけない」
という事を考えられたのではないでしょうか。恐らく、
「自分ならばこうは書かない」
という見方で、「通俗演義」を読まれた筈です。
しかし、ここからが酒見氏の面白いところです。普通の作家がそう考えたならば、もっと自由な「自分版三国志」の執筆を始めます。おかしな所を訂正して自分なりの「三国志」を執筆するのです。そうした作品は多くあります。ところが、酒見氏はそうはせず、登場人物に何とか「三国志演義」どおりの行動をさせる酒見版「三国志」を書かれました。「三国志演義」での個々の動きや発言に、人としての心理や行動学を当てはめた場合、どうすれば理屈に合うかを書かれたのです。故に、登場人物の多くは奇人とせざるを得ず、最も謎の男である孔明は、大奇人としてして書かれる事になりました。僕は孔明が奇人である作品という事で、その描き方に大きな衝撃を受けましたが、酒見氏の側の理屈としては、必然。当然の帰結であったのかも知れません。
又、こういう作品になった以上、軽い感じの作品に仕上げ、随所に笑いを持ってくる作品とせねば、ならなかったのでしょう。非常にコミカルな作品で、最後まで飽きさせません。
この作品は「無茶なプロットの無茶を無くそうとしたが為に書かれた」酒見氏一流の芸とでもいうべき秀作だと考えます。
(想像終了)


尚、

どこかで読んだ事がある文体だな
と感じた文体は、酒見氏自身の文体でした。あまりにもコミカルで、従来とは作風が全く違うので、すぐには思い当たらなかったのですね。

総評:三国志ファンには面白い作品である事に間違いがないと思います。

投稿者 strap : 2005年05月29日 12:09

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