白沢図@白沢図A白沢図B白沢図C白沢図D白沢図E白沢図F白沢図G白沢図H |
「矢張り俺がやろう。左側に数人配置し、長兵で牽制をさせて呉」 それで私は鶴膝を持たせた五人に廻り込ませ、左側方向、小人の右手側側面から攻撃を仕掛けさせた。 小人は必死で鶴膝を掴もうとするが、一本を掴もうとすると他の数本が攻撃をし、そうはさせなかった。小人は無言のまま、大きく右手を振り回した。兵は何度と無く鶴膝を突き、鶴膝で切り付けた。そういう我々と小人との駆け引きが続き、そうして暫くが経つ。 さて、私達はその左側の攻防に気を取られ、恪自身が単身、小人の左手側近くによった事を気づけなかった。それは小人にとっても同様で有ったらしく、小人が気付いた時にはもう、恪は小人の直ぐ後ろに迄迫って居たのである。全く、何という勇気であろう。否、元より恪は、己が失敗する事など、屹度微塵も考えた事が無いのである。小人が慌てて左手を後方に廻そうとした時、恪は右手で相手の左手首を、「咄」と、驚くべき速度で甲側から掴み、そして厭らしく嗤った。樹木が闇風を受けて、激しく鳴る。 「鈍間め。俺の勝ちだ」 動きが止まり、小人の顔が恐怖に歪む。 私も兵達も皆、息を飲んだ。 恪は静かに眼を瞑る。そして。 そして、一気に踏み出した右足に力を入れ支点とし、「疾」と、力強く小人を地から引き抜いた。 小人は、この世の物とは思えぬ断末魔の悲鳴をあげ、宙を舞う。それは現世に未練を残す小人の、悲痛の叫びであったと私は思う。そして小人は、落下と共に絶滅した。地に叩き付けられた小人の亡骸は、潰れ、飛び散り、青い液体塗れの肉塊と成る。我々は起った事が良く判らず、小人の悲鳴に恐怖を感じていたが、しばらくすると、恪が小人を殺した事を悟り、大きく感激し、感嘆した。 |