故国@故国A故国B故国C故国D故国E故国F故国G
呉書シリーズ@
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少年時代の私は、大人の「男」は泣かないものだと思っていた。 しかし今は解る。 その精神構造が、涙を流す事を許さないだけに過ぎないのだ。泣かないのでは無く、泣けないだけに過ぎない。 男と雖も、悲しい事もあれば、辛い事もある。その様な時に、声を出して泣けたら、どんなに楽な事であろう。意地も誇りも、何もかも捨て去り、いっそ大声を上げて泣き叫べば、どんなに救われるかわからない。 でも駄目なのだ。 一滴の涕さえも、零れる事は無い。 男は、己に男である事を科した時点で、己の為に泣く事をその精神が許さなくなるのだ。本人がどんなにそれを望んでも、涙を流す事は許されない。流される事は無いのだ。只、唯、胸の張り裂けるような思いに蜿蜒と耐え、悲しみを乗り越えるしか無い。男が泣く事を許されるのは常に、他人の痛みの為であるか、人の優しさに触れた時でしか無いのだ。男とは、何と不器用な生き物であろうか。 男は泣く事を許されぬが故に、大きな悲しみに耐えるには、別の手法を見つけねばならない。 そして于将軍の場合は、それが音楽であったのである。 |